更新 2026-10-21制度・根拠の確認 2026-10-21
この記事の目次
キャンピングカーのレンタル事業を始めると、「消費税はいつから納めるのか」「インボイスの登録はしたほうがよいのか」で迷う方が多くいます。この記事は、これから開業する方に向けて、消費税を納める年の判定のしかた、インボイスの登録の考え方、2割特例・3割特例・簡易課税・一般課税の違い、車両を買う年の注意を、国税庁の資料をもとにまとめます。どの方法が有利かは売上と車両の買い替えの時期で変わるので、税理士・税務署に確認しながら決めてください。
この記事の要点
- 「開業から 2 年間は必ず免税」ではありません。インボイスの登録、特定期間の売上(と給与)、法人の資本金 1,000万円以上、課税事業者の選択のどれかに当たると、1〜2 年目でも課税されます。
- インボイスの登録は、法人の利用者(出張・撮影・社員旅行など)が多いかで判断します。登録すると、売上にかかわらず課税事業者になります。
- 登録で課税事業者になった個人は、令和8年分まで 2割特例、令和9・10年分は 3割特例で納める額を軽くできます。ただし使えるかは年ごとに判定し、基準期間の課税売上高が 1,000万円を超えた年や、高額な車両を買って免税に戻れない年などは使えません。
- 簡易課税では、レンタカー(自動車賃貸業)は第5種事業(みなし仕入率 50%)、車両の売却は**第4種(60%)**です。基準期間の課税売上高 5,000万円以下で、事前の届出が要ります。
- 一般課税で車両を買うと消費税が還付されることがあります。ただし、課税事業者を自分で選んだ直後などに税抜 100万円以上の車両を買った場合や、時期を問わず税抜 1,000万円以上の車両(高額特定資産)を買った場合に一般課税で申告すると、買った年を含めて 3 年間は免税にも簡易課税にも戻れません(条件は本文)。
消費税の納め方の基本
課税事業者は、売上で利用者から預かった消費税から、車両・経費の支払いで払った消費税を差し引いた額を納めます(一般課税)。差し引くことを「仕入税額控除」といいます。差し引けない場合(払った消費税の方が多い場合)は、確定申告で還付を受けられます。還付を受けられるのは課税事業者だけです。
免税事業者は消費税を納めませんが、車両の購入で払った消費税の還付も受けられません。収支の計画にどう入れるかは1台から始めるレンタル事業の収支シミュレーションで説明しています。この記事では、どの年に課税されるか、どの計算方法を選ぶかを扱います。
納税義務の判定(免税になる年・ならない年)
免税かどうかは、その年の売上ではなく、過去の決められた期間の売上で判定します。
- 基準期間: 個人は前々年、法人は前々事業年度。基準期間の課税売上高(消費税がかかる売上の合計)が 1,000万円以下なら、原則として免税です。
- 特定期間: 個人は前年の 1 月 1 日〜6 月 30 日、法人は原則として前の事業年度の初めの 6 か月。特定期間の課税売上高が 1,000万円を超えると、基準期間が 1,000万円以下でも課税されます。ただし、課税売上高のかわりに給与などの支払額で判定してもよく、どちらかが 1,000万円以下なら免税にできます。
- インボイスの登録(適格請求書発行事業者の登録)を受けている間は、基準期間の売上にかかわらず課税事業者です。
- 課税事業者の選択: 届出書を出して自分から課税事業者になることもできます。選ぶと原則 2 年間は免税に戻れません。
- 新設の法人: 基準期間の無い 1 期目・2 期目でも、期首の資本金(出資金)が 1,000万円以上なら課税されます。
個人が 2027 年 4 月に開業した場合を、架空の例で整理します。
| 年 | 基準期間 | 特定期間 | 判定(登録・選択をしていない場合) |
|---|---|---|---|
| 1 年目(2027 年) | 2025 年(事業なし) | 2026 年 1〜6 月(事業なし) | 免税 |
| 2 年目(2028 年) | 2026 年(事業なし) | 2027 年 1〜6 月(実際は 4〜6 月の売上で判定し、6 か月分に直さない) | 特定期間の売上と給与の支払額が両方 1,000万円を超えれば課税。どちらかが 1,000万円以下なら免税 |
| 3 年目(2029 年) | 2027 年 | 2028 年 1〜6 月 | 2027 年の課税売上高が 1,000万円を超えれば課税。特定期間でも判定 |
1 台・2 台のレンタル事業で、開業の年の上半期に 1,000万円を超えることはまれです。多くの事業者にとって、判定を分けるのはインボイスの登録をするかどうかです。
法人化(法人成り)した場合、個人の時の売上は法人の基準期間の売上に含まれません。資本金 1,000万円未満の法人は、原則 1・2 期目は免税ですが、インボイスの登録・特定期間・大きな会社の支配下の新設法人などに当たれば課税されます。
インボイスの登録をするかどうか
インボイス(適格請求書)は、買い手が仕入税額控除を受けるための請求書・領収書です。登録すると「T + 13 桁」の登録番号を記載したインボイスを出せるようになり、そのかわり課税事業者になります。登録の申請は税務署へ出します(e-Tax でも可)。免税事業者が令和11年9月30日までの日を含む課税期間に登録する場合は、登録日から適格請求書発行事業者になれる経過措置があります。
登録が要るかは、利用者がインボイスを必要とするかで考えます。
| 利用者 | インボイスの必要性 |
|---|---|
| 個人の旅行・レジャー | 消費税を差し引く立場にないので、原則として不要 |
| 法人・課税事業者(出張、撮影・ロケ、社員旅行、イベント) | 仕入税額控除のために求められることがある |
登録していない事業者から買った場合でも、買い手は経過措置で一定の割合を差し引けます。その割合は**令和8年10月1日から 80% から 70%**に下がり、令和10年10月1日から 50%、令和12年10月1日から 30%、令和13年10月1日からは差し引けなくなります。法人の利用者にとって、登録していない事業者を選ぶ不利は年々大きくなります。
判断の目安は次のとおりです。
- 利用者の大半が個人旅行で、法人の利用を積極的に取りにいかないなら、登録しない選択もあります。
- 法人の利用が売上の柱になる、法人と継続して取引したいなら、登録を検討します。
- 登録しないまま法人から問い合わせが来たときに、どう答えるかを決めておきます。
2割特例と3割特例
インボイスの登録を機に免税事業者から課税事業者になった事業者は、納める消費税を売上の消費税の一定割合にできる特例があります。
| 特例 | 納める額 | 対象 | 使える期間 |
|---|---|---|---|
| 2割特例 | 売上の消費税額の 2 割 | 登録で免税事業者から課税事業者になった事業者 | 令和8年9月30日の日を含む課税期間まで。個人は令和8年分の確定申告まで |
| 3割特例 | 売上の消費税額の 3 割 | 登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者 | 令和9年分・令和10年分の確定申告 |
どちらの特例も、登録した年に使えれば以後ずっと使えるわけではなく、年(課税期間)ごとに使えるかを判定します。国税庁のインボイス Q&A(問115・問115-2)は、次のような年には使えないとしています。
- 基準期間(個人は前々年)の課税売上高が 1,000万円を超える年
- 特定期間(個人は前年の 1〜6 月)の課税売上高(または給与の額)が 1,000万円を超えて、免税にならない年
- 課税事業者の選択の届出を出して課税事業者になったあと 2 年以内に、一般課税で税抜 100万円以上の資産(調整対象固定資産)を買い、免税に戻れない年(登録の経過措置で課税事業者になり、選択の届出を出していない人は当たりません)
- 一般課税で税抜 1,000万円以上の資産(高額特定資産)を買い、免税に戻れない年
- 課税期間を 1 か月・3 か月に短くしている年
ほかに相続などの条件もあります。売上が伸びて 2 年前の売上が 1,000万円を超えた年や、高額な車両を一般課税で買ったあとの年は、特例を前提に資金繰りを組まないようにします。
3割特例は令和8年度の税制改正で設けられたもので、国税庁の案内は個人事業者向けとしています。法人が使えるとは書かれていません。細かな要件は、国税庁のインボイス制度特設サイトで確認してください。
令和9年(2027 年)以後に開業して登録する個人は、2割特例の期間は終わっているので、3割特例が使えるかを確認することになります。
特例のあとに簡易課税へ移る場合の手当てもあります。2割特例(3割特例)を使った翌年は、その年の申告期限までに簡易課税制度選択届出書を出せば、その年から簡易課税にできます(例: 令和8年分で 2割特例を使った個人は、令和10年3月31日までに届け出れば令和9年分から簡易課税)。
簡易課税と一般課税
課税事業者の計算方法は、一般課税と簡易課税の 2 つです。
簡易課税は、売上の消費税額に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けた額を、払った消費税とみなして差し引きます。実際に払った消費税の額は使いません。
- 使えるのは、届出書を出していて、基準期間の課税売上高が 5,000万円以下の年です。
- 届出は、原則として使いたい年の前の年の末日までに出します。一度選ぶと 2 年間はやめられません。
- レンタカー(日本標準産業分類の自動車賃貸業)は**第5種事業で、みなし仕入率 50%**です。
- 事業に使っていた車両を売った分は、固定資産の譲渡として**第4種事業(60%)**です。レンタカーの売上と分けて計算します。
一般課税は、実際に払った消費税を差し引きます。車両を買った年は差し引く額が大きくなり、還付になることがあります。ただし次の縛りに注意します。
- 車両 1 台が税抜 100万円以上なら、消費税の調整対象固定資産です。課税事業者を選んで課税事業者になった日から 2 年の間や、資本金 1,000万円以上で設立した法人の最初の 2 年の間に、これを買って一般課税で申告すると、免税事業者に戻れず、簡易課税も選べない期間ができます。
- 車両 1 台が税抜 1,000万円以上なら、高額特定資産でもあります。こちらは開業直後や課税事業者の選択に限らず、課税事業者が一般課税の年に買えばいつでも同じ制限がかかります(国税庁 No.6502)。大型のキャブコンなど高額な車両を買うときは、とくに注意します。
- どちらも、期間の起点は買った課税期間(個人はその年)の初日です。個人が 1 年目に買った場合は次のようになります。
| 年 | 申告のしかた |
|---|---|
| 買った年(1 年目) | 一般課税で申告(還付を受けるのはこの年) |
| 2 年目・3 年目 | 基準期間の売上が 1,000万円以下でも課税事業者のまま。簡易課税も選べない(2割特例・3割特例も使えない) |
| 4 年目 | 制限が外れ、通常の判定に戻る。簡易課税にするなら 3 年目中に届出を出す |
細かな期間は、法人の事業年度や届出の時期で変わるので、買う前に税理士・税務署に確認してください。
- 課税事業者の選択の届出は、原則として課税事業者になりたい年の前の年の末日まで(開業した年はその年の末日まで)です。
計算例: 方法ごとに納める額を比べる
架空の前提で、1 年の消費税の額を比べます。消費税と地方消費税を合わせて 10% とし、端数の処理などは省いて単純にしています。
| 前提(架空) | 値 |
|---|---|
| レンタルの売上 | 税込 660万円(うち消費税 60万円) |
| 経費の支払い(保険料など消費税のかからないものを除く) | 税込 220万円(うち消費税 20万円) |
| 車両を買う年の車両代 | 税込 770万円(うち消費税 70万円) |
| 計算方法 | 計算 | 納める額 |
|---|---|---|
| 2割特例 | 60万円 × 20% | 12万円 |
| 3割特例 | 60万円 × 30% | 18万円 |
| 簡易課税(第5種) | 60万円 − 60万円 × 50% | 30万円 |
| 一般課税(車両を買わない年) | 60万円 − 20万円 | 40万円 |
| 一般課税(車両を買う年) | 60万円 − 20万円 − 70万円 | 30万円の還付 |
この例から分かることは次のとおりです。
- 特例が使える間は、特例がいちばん軽くなりやすいです。
- 車両を買わない年は、簡易課税の方が一般課税より軽くなります。経費の消費税が売上の消費税の半分より少ないためです。
- 車両を買う年は、一般課税なら還付を受けられます。ただし、簡易課税を選んでいる年や特例を使う年は、車両の消費税は計算に入らず還付はありません。還付を狙って課税事業者を選び、その 2 年の間に車両を買うと 3 年の縛りがかかるので、翌年以後の納める額と合わせて比べます。
簡易課税は届出が事前に要り、一度選ぶと 2 年続くので、車両を買い替える年を見込んで選ぶのが大切です。
キャンセル料と料金の表示
キャンセル料の消費税
キャンセル料は、性格によって消費税の扱いが変わります。表の「不課税」は、消費税の対象にならない取引のことです。
| キャンセル料の性格 | 消費税 |
|---|---|
| 解約の事務手数料(いつ取り消しても一定額) | 課税 |
| 取り消しで失う利益の損害賠償(取り消しの時期で額が変わる) | 不課税 |
| 両方を区分せずにまとめて受け取る | 全額を不課税として扱う |
「利用日の 7 日前から料金の 30%」のように時期で率が変わる規定は、損害賠償の性格になります。売上の台帳では、課税の売上と不課税のキャンセル料を分けて記録します。キャンセル規定を約款と料金表にどう書くかは、レンタカー事業の貸渡約款と料金表の作り方をご覧ください。
総額表示
消費者に対して前もって価格を表示する場合は、消費税を含めた総額で表示します(例: 「11,000円(税込)」「11,000円(税抜価格10,000円)」)。料金表、ホームページ、予約サイトの表示が対象で、口頭で伝える価格は対象外です。免税事業者が表示をどうするかは税務署に確認してください。いずれにしても、利用者には税込の総額で示すと分かりやすく、問い合わせも減ります。
開業前に決めておく手順
- 利用者の想定を決める(個人旅行中心か、法人の利用も取りにいくか)
- インボイスの登録をするか決める。登録するなら、開業日に合わせて申請する
- 登録する個人は、使える特例(2割特例・3割特例)を国税庁の特設サイトで確認する
- 車両を買う時期と台数の計画を立て、一般課税・簡易課税のどちらが有利か比べる(簡易課税は前の年のうちに届出)
- 課税事業者を選んで車両の還付を受けるなら、3 年の縛りを含めて税理士と試算する
- 料金表を税込の総額で作り、キャンセル料の規定を時期で変わる率にするか一定額にするか決める
- 売上の台帳で、課税の売上・不課税のキャンセル料・車両の売却を分けられるようにする
よくある質問
開業から 2 年間は消費税を納めなくてよいのではないですか?
個人で基準期間の売上が無い 1・2 年目は、原則として免税です。ただし、インボイスの登録をした、課税事業者を選んだ、特定期間の売上と給与の支払額が 1,000万円を超えた、法人で資本金が 1,000万円以上、のどれかに当たれば課税されます。「2 年間は必ず免税」とは考えないでください。
インボイスの登録をしないと、利用者は減りますか?
個人の旅行の利用者は、インボイスで消費税を差し引く立場にないので、登録の有無はふつう影響しません。法人の利用者は、登録していない事業者への支払いで差し引ける割合が、令和8年10月1日から 70% に下がり、その後も段階的に下がります。法人の利用が多いかどうかで判断してください。
簡易課税にすると、レンタカーはどのくらい有利ですか?
レンタカーは第5種で、みなし仕入率は 50% です。売上の消費税の半分を納める計算になります。経費の消費税が売上の消費税の半分より少ない年は簡易課税が有利で、車両を買う年は一般課税が有利になりやすいです。
車両を売ったときの消費税はどうなりますか?
課税事業者なら、車両を売った代金にも消費税がかかります。簡易課税では、車両の売却は第4種事業(みなし仕入率 60%)で、レンタカーの売上(第5種)と分けて計算します。
3割特例は法人でも使えますか?
国税庁の案内では、3割特例は登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者が対象で、法人は対象として書かれていません。法人化を考えている場合は、使える特例が変わる点も含めて税理士に相談してください。
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- 1台から複数台へ事業を拡大するタイミングと判断基準 — 売上が 1,000万円・5,000万円を超えるときの影響
根拠
- No.6501 納税義務の免除(国税庁) — 基準期間・特定期間・インボイスの登録・課税事業者の選択・調整対象固定資産(確認 2026-10-21)
- No.6502 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例(国税庁) — 税抜 1,000万円以上の資産を一般課税で買った後の免税・簡易課税の制限と期間の起点(確認 2026-10-21)
- インボイス制度に関する Q&A 問115(国税庁) — 2割特例を使えない課税期間(確認 2026-10-21)
- インボイス制度に関する Q&A 問115-2(国税庁) — 3割特例を使えない課税期間(確認 2026-10-21)
- No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき(国税庁) — 開業した年の特定期間、法人成りと基準期間、選択の届出の時期と 3 年の縛り(確認 2026-10-21)
- No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(国税庁) — 資本金 1,000万円以上の新設法人(確認 2026-10-21)
- No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)(国税庁) — 登録の制度、登録番号、登録日からの経過措置、2割特例(確認 2026-10-21)
- 個人事業者の方へ インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集(国税庁、令和8年9月) — 2割特例は令和8年分まで、3割特例は令和9・10年分、簡易課税への移行、80% から 70% への引下げ(確認 2026-10-21)
- 2割特例(インボイス制度特設サイト)(国税庁) — 2割特例の適用期間(確認 2026-10-21)
- No.6505 簡易課税制度(国税庁) — 5,000万円以下、届出の時期、2 年の継続、みなし仕入率(確認 2026-10-21)
- No.6509 簡易課税制度の事業区分(国税庁) — 事業区分、固定資産の譲渡は第4種(確認 2026-10-21)
- 日本標準産業分類からみた事業区分(国税庁 質疑応答事例) — 自動車賃貸業は第5種(確認 2026-10-21)
- No.6253 キャンセル料(国税庁) — 事務手数料は課税、損害賠償は不課税、一括は不課税(確認 2026-10-21)
- No.6902 「総額表示」の義務付け(国税庁) — 税込の総額での表示と表示例(確認 2026-10-21)
この記事は一般的な情報です。法令・保険・税の扱いは変わることがあり、地域や個別の事情によっても異なります。手続きの前に、管轄の運輸支局・税務署・保険会社・専門家にご確認ください。

