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開業前に確認したい損益分岐点と投資回収期間

開業前に確認したい損益分岐点と投資回収期間

更新 2026-10-22制度・根拠の確認 2026-10-22

この記事の目次
  1. この記事の要点
  2. 計算例の前提
  3. 開業前に出しておく 4 つの数字
  4. 分岐の日数を「貸せる日数の上限」と比べる
  5. 返済期間で現金の分岐が変わる
  6. 投資回収期間の出し方
  7. 売却価格を入れて考える
  8. 続けるか、売るかの比べ方
  9. 撤退・縮小の基準の決め方
  10. よくある質問
  11. 関連する記事
  12. 根拠

開業を決める前に「何日貸せば赤字にならないか」「車両に使ったお金は何年で戻るか」「うまくいかなかったら、どこでやめるか」を数字で決めておくと、迷ったときの判断が速くなります。この記事は、これから開業する方に向けて、損益分岐の日数を判断に使う方法、投資回収期間の出し方、車両の売却価格を入れた考え方、撤退・縮小の基準の決め方を、架空の計算例でまとめます。

この記事の要点

  • 損益分岐は「帳簿(減価償却を含む)」と「現金(借入の元金の返済を含む)」の 2 つで出し、どちらも「年に貸せる日数の上限」と比べます。分岐の日数が上限の大半を占める計画は、少しの休車や閑散期で崩れます。
  • 投資回収期間は、開業の時に使ったお金 ÷ 1 年に事業が生む現金(返済の前)で出します。キャンピングカーは売却できるので、売却価格を入れて、使う年数のうちに回収できるかを見ます。
  • 続けるか売るかは、「1 年続けて増える現金(元金の返済の前)」と「その 1 年で下がる売却価格」を比べると判断できます。前者が小さければ、続けるほど損が広がります。
  • 撤退・縮小の基準は、開業する前に、時期・指標・線・その時に取る行動の 4 つで書いておきます。リースは原則として途中で解約できず、解約すると残りのリース料に当たる額を一括で払うので、基準の作り方が変わります。
  • キャンピングカーの売却価格・稼働率の公的な統計はありません。この記事の数字はすべて架空の前提です。

計算例の前提

この記事の計算例は、1台から始めるレンタル事業の収支シミュレーションと同じ架空の前提を使います。開業の時の費用は開業資金の記事の 1 台の例と同じです。売却価格と貸せる日数の上限は、この記事で足した架空の値です。

項目 架空の前提 どこから
1 日の料金 20,000円 収支シミュレーションと同じ
1 日あたりの変動費 5,000円(手数料が売上の 10%、清掃 2,000円、減り 1,000円) 同じ
1 日の限界利益 15,000円 同じ
現金で出ていく固定費 年 109.48万円(うち 1 年目の利息 10万円) 同じ
減価償却 年 150万円(600万円を例として 4 年・定額法) 同じ
借入と返済 500万円を 10 年・元金均等(元金 年 50万円) 同じ
開業の時に使ったお金 689万円(車両 600万円・登録の諸費用 30万円・装備 30万円・登録免許税 9万円・車庫 10万円・Web 10万円) 開業資金の記事の 1 台の例(保険と運転資金を除く)
年に貸せる日数の上限 300 日 この記事で足した架空の値(目安や相場ではありません)
車両の売却価格 1 年後 480万円、2 年後 420万円、3 年後 360万円、4 年後 300万円、5 年後 240万円 この記事で足した架空の値(車両の価格の 80%→40%。相場ではありません)

開業資金の記事では、初年度の任意保険 24万円も開業の時に払う費用に入れていますが、この記事では毎年の固定費に入れているので、開業の時のお金から除いています。所得税・消費税は考えません。課税事業者になる場合や、利益に税がかかる場合は、手元に残る額が減ります。

開業前に出しておく 4 つの数字

数字 出し方 この前提の値 何を判断するか
帳簿の損益分岐 (現金の固定費+減価償却)÷ 1 日の限界利益 年 173 日 事業として利益が出るか
現金の分岐 (現金の固定費+元金の返済)÷ 1 日の限界利益 年 107 日 返済まで払って手元の資金が減らないか
投資回収期間 開業の時のお金 ÷ 1 年の返済前の現金 稼働により 3〜6 年、低いと回収できない 車両を使う年数のうちに戻るか
撤退の線 開業前に自分で決める(後の節) 例: 繁忙期の後、年の見込みが帳簿の分岐に届かなければ見直す どこで縮小・撤退するか

帳簿と現金の分岐の式と、稼働率別の年間の収支の表は、収支シミュレーションと収益性の記事で詳しく計算しています。この記事では、これらの数字を「判断」に使う方法を中心に書きます。

分岐の日数を「貸せる日数の上限」と比べる

年 173 日という数字だけでは、楽なのか厳しいのか分かりません。比べる相手は、1 年に貸せる日数の上限です。上限は 365 日ではありません。

  • 点検と車検の日: 8 ナンバーのレンタカーは定期点検が 3 か月ごと、車検が初回 2 年・以後 1 年ごとです。その日は貸せません。
  • 受け渡しと清掃の日: 返却から次の貸出までに清掃と点検の時間が要ります。日常点検は 1 日 1 回、運行の開始前に行う義務があります。
  • 自分が対応できない日: 1 人で運営するなら、受け渡しのできない日は貸せません。
  • 事故・故障の休車: 修理の間は貸せません。

この例では上限を架空に年 300 日と置きました(実際の上限は、点検の日数や運営の体制で変わります)。帳簿の分岐 173 日は上限の約 58%、現金の分岐 107 日は約 36% です。つまり、貸せる日の 6 割近くを埋めないと帳簿は黒字になりません。さらにレンタルの需要は連休や夏休みに集中しやすく、閑散期は上限まで予約が入りません。繁忙期に貸せる日数を数え、そこで何日を稼げるかを見ると、計画が現実に合っているかが分かります。

稼働率に公的な定義はありませんが、毎年運輸支局に出す貸渡実績報告書の「延貸渡日車数」(貸した日数の合計)を、配置した台数 × 期間の日数で割る数え方にしておくと、報告と自分の数字が一致します。

安全余裕率で「どれだけ落ちても大丈夫か」を見る

中小企業基盤整備機構の解説にある安全余裕率は、売上が損益分岐点の売上からどれだけ離れているかの割合です。

安全余裕率 =(売上 − 損益分岐点の売上)÷ 売上 × 100%

この前提の変動費率は 25% なので、損益分岐点の売上は 259.48万円 ÷(1 − 0.25)≒ 346万円、現金の分岐の売上は 159.48万円 ÷ 0.75 ≒ 213万円です。

年に貸した日数(売上) 帳簿の安全余裕率 現金の安全余裕率
144 日(288万円) 約 −20%(赤字) 約 26%
216 日(432万円) 約 20% 約 51%

年 216 日貸せる計画でも、売上が 2 割落ちると帳簿は赤字になります。事故で 1 か月止まる、繁忙期に雨が続く、といったことで 2 割は動くので、安全余裕率が小さい計画は、固定費(車両の価格・車庫・保険)から見直します。

返済期間で現金の分岐が変わる

現金の分岐の日数は、毎年の元金の返済が大きいほど増えます。同じ 500万円でも、返済期間で次のように変わります(利息は比べやすいように同じ 10万円で計算)。

返済期間(元金均等) 元金の返済(年) 現金の分岐
5 年 100万円 年 140 日
7 年 約 71.4万円 年 121 日
10 年 50万円 年 107 日

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、設備資金の返済期間を 20 年以内(据置期間 5 年以内)としています(最新の条件は公庫で確認してください)。返済期間を長くすると毎年の分岐は下がりますが、払う利息の合計は増えます。また、車両を使う年数より返済期間が長いと、車を売っても借入が残ります。返済期間は、現金の分岐(毎年の返済を払えるか)と、車両を何年使うか(売却価格が借入の残りを上回るか)とあわせて決めます。公庫のセルフチェックリストも「利益から借入の返済が可能な収支計画か」を確認の項目にしています。

投資回収期間の出し方

投資回収期間は、開業の時に使ったお金が、事業の生む現金で何年で戻るかです。借入の返済の仕方に左右されないよう、返済の前の現金で計算します。

1 年の返済前の現金 = 1 日の限界利益 × 貸した日数 −(現金の固定費 − 利息)

投資回収期間 = 開業の時のお金 ÷ 1 年の返済前の現金

年に貸した日数 限界利益 返済前の現金(年) 投資回収期間
72 日 108万円 8.52万円 約 81 年(実質的に回収できない)
144 日 216万円 116.52万円 約 5.9 年
216 日 324万円 224.52万円 約 3.1 年

返済前の現金は、限界利益から、利息を除いた現金の固定費 99.48万円を引いて出しています。年 144 日の場合、689万円 ÷ 116.52万円 ≒ 5.9 年です。

回収期間は車両を使う年数と比べます。借入の返済期間とは比べ方が違うので、分けて考えます。

  • 車両を使う年数: 何年で買い替えるつもりか。回収期間がそれより長ければ、売却価格で足りない分を埋められるかを次の節で確認します。
  • 返済できるかは別に見る: 回収期間の分子は自己資金も含む開業の時のお金全体で、返済するのは借入の分だけです。そのため「回収期間より返済期間が短いと資金が足りなくなる」とは言えません。返済できるかは、毎年の返済前の現金から利息と元金の返済を払って残るか(上の現金の分岐)で判断します。例えば年 144 日なら、回収期間は約 5.9 年ですが、500万円を 5 年で返す(元金 年 100万円)場合でも、返済前の現金 116.52万円 − 利息 10万円(概算)− 元金 100万円 = 6.52万円が残ります。ただし、この残りから事業主の生活費と税を払うので、それが足りるかは別に確認します。

なお、減価償却の年数(この例では 4 年)は税の計算のための年数で、車両を実際に使える年数や回収期間とは別のものです。

売却価格を入れて考える

キャンピングカーは、事業をやめるときや買い替えるときに売れます。売却価格を入れると、使う年数のうちに回収できるかを判断できます。キャンピングカーの売却価格の公的な統計はないので、この例では、5 年後に車両の価格の 40% の 240万円で売れると架空に置きます。

差し引きは、5 年の返済前の現金と売却価格の合計から、開業の時のお金 689万円を引いた額です。

年に貸した日数 5 年の返済前の現金 5 年後の売却価格 差し引き
72 日 42.6万円 240万円 −406.4万円
144 日 582.6万円 240万円 +133.6万円
216 日 1,122.6万円 240万円 +673.6万円

年 144 日なら、売却価格を入れて 5 年で回収でき、133.6万円が残ります。ただし、この数字は利息と税を引く前です。この例では 5 年の利息は約 40万円(元金均等で、毎年の残高の 2% として概算)で、残りは事業主の生活費と税に回ることになります。

売却価格を見るときに、もう 1 つ確認することがあります。売却価格と借入の残りの差です。この例では 5 年目の終わりの借入の残りは 250万円で、売却価格 240万円では 10万円足りません。売っても借入が残る状態だと、撤退したくても手元のお金を足さなければやめられません。売却価格の見込みが、どの年でも借入の残りを上回るように、返済期間と自己資金の額を決めておくと、撤退の選択肢を残せます。

税の面では、減価償却で帳簿の価額が小さくなっている車を売ると、売却益が出て税がかかる場合があります。消費税の課税事業者で簡易課税を選んでいる場合、車両の売却は第四種事業(みなし仕入率 60%)です。売ったときに手元に残る額は、税理士・税務署に確認して見込みます。

続けるか、売るかの比べ方

開業してから「このまま続けるか、売ってやめるか」を考えるときは、1 年ごとに次の 2 つを比べます。

  • 続けた場合: 1 年で増える現金 + 1 年後の売却の手取り
  • 今売った場合: 今の売却の手取り

両方に入っている元金の返済を消すと、比べ方は次のように簡単になります。

続ける価値 = 1 年の返済前・利息後の現金(限界利益 − 現金の固定費)− その 1 年で下がる売却価格

開業から 1 年たった時点(売却価格 480万円、借入の残り 450万円)で、2 年目も同じ稼働が続くと見込んだ場合を計算します。2 年目の利息は 1 年目と同じ 10万円の概算です。

2 年目の見込み 限界利益 − 現金の固定費 1 年で下がる売却価格 続ける価値
年 72 日 −1.48万円 60万円 −61.48万円(今売る方がよい)
年 144 日 +106.52万円 60万円 +46.52万円(続ける方がよい)

年 72 日の場合で検算します。今売れば 480万円 − 450万円 = 30万円が残ります。続けると、2 年目の現金は −51.48万円(元金 50万円を含む)、2 年後に売って 420万円 − 400万円 = 20万円で、合計 −31.48万円です。差は 61.48万円で、表の値と一致します。

この式から、続ける意味がある最低の日数も出せます。(現金の固定費 109.48万円 + 1 年で下がる売却価格 60万円)÷ 15,000円 ≒ 113 日です。帳簿の分岐(173 日)は、税の年数で計算した減価償却 150万円を使うので、実際の値下がり(この例では 60万円)と違う数字になります。続けるか売るかの判断には、帳簿の利益ではなく、実際の売却価格の下がり方を使います。

撤退・縮小の基準の決め方

撤退の基準は、赤字が続いてから考えると、売れば取り戻せたお金を待つ間に失いがちです。開業する前に、事業計画書の付け足しとして次の 4 つを書いておきます。

  1. 見直す時期: 例えば、繁忙期を 1 回終えた後と、毎年の貸渡実績報告書をまとめる時期(5 月 31 日までに提出)。延貸渡日車数がそろうので、計画と比べやすくなります。
  2. 見る指標: 1 年に貸した日数(帳簿と現金の分岐との比較)、運転資金の残り、売却価格と借入の残りの差、事故・故障で止まった日数。
  3. 線: 指標ごとに、どこを下回ったら動くかを数字で決める。
  4. その時の行動: 見直す・縮小する・撤退するの順に、何をするかを決める。

架空の例として、この記事の前提なら次のように書けます。

状態 線(架空) 行動
見直す 繁忙期を終えて、年の見込みが帳簿の分岐 173 日に届かない 料金・予約の経路・閑散期の売り方・固定費を見直す
縮小する 1 年の実績が「続ける意味がある日数」113 日を下回る、または運転資金の残りが自分で決めた月数を切る 複数台なら台数を減らす。1 台なら売却の見積もりを取る
撤退する 縮小しても 1 年の実績が現金の分岐 107 日を下回る見込み 車両を売り、事業の廃止の手続きをする

運転資金の残りの線に公的な基準はありません。公庫のセルフチェックリストが開業の時に「半年程度の赤字補てん資金」を確認していることを参考に、自分で決めます。

撤退・縮小するときの手続きと費用で、見落としやすい点は次のとおりです。

  • 保険は勝手に外さない: 任意保険の水準は許可の条件で、許可の後も入り続けることが求められています。閑散期だけ保険を外すと条件に反するおそれがあるので、貸さない期間の扱いは、外す前に管轄の運輸支局に確認します。
  • 減車の届出: マイクロバス以外の減車は、届出が不要になっている運輸局が多い(関東・近畿で確認)ですが、管轄の運輸支局で確認します。事業をやめる場合は、廃止の届出を事後に遅滞なく出します。
  • リースの車: ファイナンス・リースは原則として途中で解約できず、解約するときは残りのリース料に当たる額を一括で払います。売却価格で回収する道がないので、撤退の線は「リース料を払い続けられるか」で決め、リースの期間は撤退の判断ができる長さにしておきます。
  • 売却の見積もりは早めに: 売却価格は車の状態・走った距離・需要で変わります。年に 1 回、販売店や買取の業者から見積もりを取り、計画の売却価格を置き直しておくと、判断のときに慌てません。

よくある質問

損益分岐は帳簿と現金のどちらで見ればよいですか?

両方を見ます。帳簿の分岐は事業として利益が出るか、現金の分岐は返済まで払って手元の資金が減らないかを示します。開業してすぐは現金の分岐を下回らないことを最低限にし、帳簿の分岐を超えることを目標にします。税の申告や融資の審査では帳簿の利益が使われます。

投資回収期間は何年以内なら良いと言えますか?

公的な基準はありません。まず車両を使う年数より短いかで判断し、長い場合は売却価格で埋められるかを確認します。借入の返済期間とは直接は比べません。回収期間は自己資金を含む開業の時のお金全体で計算し、返済するのは借入の分だけだからです。返済できるかは、返済前の現金から利息と元金を払って残るか(現金の分岐)と、売却価格が借入の残りを上回るかで、別に確認します。

売却価格はどう見積もればよいですか?

キャンピングカーの売却価格の公的な統計はありません。同じような車(ベース車・架装・年式)の買取や下取りの見積もりを、販売店や買取の業者から取ります。計画では低めに置き、毎年見積もりを取り直して置き換えます。

実績が分岐を 1 か月下回ったら、すぐやめるべきですか?

レンタルの需要は季節で大きく偏るので、1 か月の実績では判断しません。月別の計画を作っておき、計画との差で見ます。開業前に決めた見直しの時期(繁忙期の後・年度の終わり)に、1 年分の見込みで判断します。

2 台目を入れるかどうかも、同じ考え方で判断できますか?

できます。2 台目の車両の価格・固定費・返済を足し、2 台目の分の分岐の日数と投資回収期間を出します。1 台目の実績で、繁忙期に断った予約の日数が 2 台目の分岐の日数を超えるかが目安の 1 つです。

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根拠

この記事は一般的な情報です。法令・保険・税の扱いは変わることがあり、地域や個別の事情によっても異なります。手続きの前に、管轄の運輸支局・税務署・保険会社・専門家にご確認ください。

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